
2018年度作品 554ページ
著者:辻村深月
出版:ポプラ社
ブクログのオススメ欄にこの本がオススメされていて、絵の感じがとても記憶に残っていたのが出会いのはじまり。
普段購入する本はもっぱら好きな作家の新刊を除き文庫本、新品ハードカバーは滅多に買わない主義でしたが、店頭で平積みにされた実物を実際に手に取ってみて、装丁デザインの美しさも踏まえて即購入。
そのまま帰宅後、ぶっ通しで3時間一気読み。
この厚さ(554P)の一気読みは勿論初体験。
ここまで時間を忘れさせてくれる一冊になるとは正直思いもしなかった。それくらいこの本に、この世界に引き込まれた。
実際に私用をスッカリ忘れしまったので、鏡の世界為らぬ、本の世界 に行っていたといっても過言ではない。
*あらすじ*
あなたを、助けたい。
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
本作はとある出来事がキッカケで不登校となった中学1年女子、安西こころ がある日自部屋の鏡に吸い込まれ、もう一つの世界(お屋敷)に転送されるところから話は俄然面白くなる。
室内には同じ状況と思われる6人の中学生達、そこに現れる狼のお面を被った少女、通称オオカミ様が語るには、
「今日から三月(約1年)の間、この城の中で”願いの部屋”に入る鍵探しをしてもらう。見つけた一人だけが扉を開けて一つだけ願いを叶える権利が与えられる。それ以外は...。尚9時から17時までは出入り自由、但し17時までに自分の世界に帰らないと私に食べられてしまう、しかも連帯責任」
7人の共通点、選ばれた理由、城の謎、仲間意識と仲間外れ、秘密の共有etc...
いい意味で裏切られ、二転三転するストーリー展開。
はじめは見えない距離があった人間関係にちょっとしたやりとりで変化する瞬間だったり、内心思っていても実際に行動に出せないもどかさがリアルで描写され、とても 他人事に思えない心の動き にまるで自分の事のように身近に感じられた。
心に問題を抱えながら現実世界と鏡の世界を行き来すること。
多感な年代だからこその7人それぞれに別々の悩みや葛藤が生々しく描かれて、時に胸を締め付けられほどのドラマに昇華されていく。
特に中盤以降は唖然とする伏線回収にただただ驚き、彼女たちがどう難題と向き合い、行動していくのか、
ページをめくる手が止まらなかった。
飯とトイレの時間すら煩わしく感じ、夢中に読みふけってしまった。
ココで、とあるエピソードを紹介したい。
現実世界で学校に行く決断をした後、しばらく姿を現さないメンバーの一人が、
数か月後、鏡の世界に何事もなかったように居座る。
その雰囲気を察し、想いやる優しい心遣いの連鎖。
この場面、むちゃくちゃ目頭が 熱く なったのは言うまでもない。
これ以上はネタバレに関わるので控えめますが、是非読んで欲しいオススメの一冊。
追伸:この本は今不登校な子、そして不登校の子を持つ親は是非読んでほしい。決っして学校に行け!又は行くな!と断言していないところが響く。人の心を動かす本だ。
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